いつもはもう少し手前で出会う臨時特急「北斗91号」が、この日は南千歳駅の構内ですれ違っていきました。
函館方面からの下り列車は軒並み少しずつですが遅れが出ていたようです。
年明け最初の「北斗星」乗車。
今のところはほぼ順調な道中ですが、この先の空模様がちょっと心配です。
洞爺を出るとすぐに見える虻田神社の赤い鳥居。
雪の中に立つ姿は一際凛々しく映ります。
通過するたびに目を留めてしまうお気に入りの風景です。
噴火湾あたりは穏やかな空模様。
海の上には綺麗な月が浮かんでいました。
後で月例を調べてみたら、ちょうどこの夜が満月だったようです。
急カーブが続く森~函館間、窓辺にへばりつくように覗き込むと機関車の光が見えました。
せっかくの綺麗な月と絡めて撮ろうと悪戦苦闘…。
大沼を過ぎたあたりで貨物列車がすれ違っていきました。
ちょうど大沼国定公園・小沼の湖畔、昼間だったら景色が素晴らしいポイントです。
数分遅延で函館到着。
機関車交換作業を観に行くと、最後尾車両はすっかり白覆面でした。
パブタイムの食堂車、概ね各テーブルに1~2人ずつ位の混み具合でした。
淋しくもなく、賑やかすぎもせず、個人的にはちょうど居心地良く感じる頃合いです。
青函トンネルを抜けて青森に入ると、車窓にオリオン座が見えました。
僅かな遅延は函館発車時点で一旦回復したものの、青函トンネルを抜けた後、青森手前の中沢という無人駅で突然停まるとそのまま動かなくなってしまいました。
時計を見ると深夜0時。
さすがにこの時間では車内放送もありませんから詳しい事情は分かりませんが、やはり雪の影響なんでしょうか?
30分近く経ったところでようやく運転再開。
青森に着くと慌しく機関車交換を済ませて出発です。
外はさほど荒れているようには見えませんが、線路際には結構な積雪。
この列車が通る前にまとまって降っていたのかも知れませんね。
いつものように、浅虫温泉の海を見届けたら横になることにします。
「雪により信号が切り替わらなくなった為、30分ほど遅れて運転しております…」と、朝一番の車内放送が流れました。
まだ薄暗い福島には6時半、郡山には7時07分。
ここで数分ほど停まっている間に、いつもは白河あたりですれ違う石油貨物列車がホームの向こう側に入ってきました。
郡山発車後、車窓左手に見える車両工場の構内には、今春運行開始予定の「SL銀河」の客車の姿が見えました。
昨年のプレスリリースそのままの、ダークブルーの車体に大きく星座をあしらった一際目を惹く斬新なデザイン。
そういえばドイツの寝台列車にもこんな感じのがあったような気がします。
以前の乗車記でも触れたことがあったかと思いますが、このSL客車は最近まで札幌圏のJR学園都市線で使われていたディーゼルカーを改造したもの。
白地にライトグリーンの帯を纏った北海道時代の塗装そのままに、郡山の構内に随分長い間留置されていたのを通るたびに眺めていたのですが、こうしていよいよ完成間近の姿を見るとちょっとワクワクしてしまいます。
郡山を過ぎたところでモーニングタイムの食堂車へ。
ようやく雲の隙間から朝陽が見えてきました。
車窓に雪は無いものの、いかにも寒そうな風景です。
宇都宮の構内には、国鉄時代に戻ったような懐かしい色のディーゼルカーが停まっていました。
終点・上野には約45分遅延で到着。
元々、冬季限定の減速ダイヤで到着時刻が繰り下げられていたので、通常ダイヤと比べると1時間以上も遅くなってしまった計算ですが、そこは厳冬期の長距離列車、こうして無事に動いてくれているだけでも感謝しなければと思います。
東京も寒さが厳しくなりそうだと天気予報で訊きましたが、降りてみると思ったよりは割と暖かな印象です。
見ると13番線ホームの先端、下り列車の機関車が停まるあたりに「立入禁止」の掲示が貼られていました。
20時半から21時半といえば、ちょうど下り「あけぼの」が出る位の時間帯です。
きっと夜毎大勢のファンの方々が名残りを惜しんで詰めかけておられるんだろうなぁ…と、いよいよ定期運行終了が決まった現実を思い知り、今更ながら胸の詰まるような思いに駆られます。
奇しくも前日、寝台特急「あけぼの」の定期運行終了・臨時列車化が正式発表されました。
来年、平成26年3月のダイヤ改正以降は、定期列車としては「北斗星」が唯一の、最後のプルートレインということになります。
列車を取り巻く環境も、乗る人々の想いも、これから少しずつ変わっていくことになるのでしょう。
まもなく26周年を迎える「北斗星」、いよいよ大きな節目を迎えつつあるのかな…という気がしています。
年内最後の「北斗星」乗車、発車前の上野駅には昔懐かしい色の特急電車が停まっていました。
平日の上り列車とあって往路は静かな車中でしたが、復路の今夜はクリスマス前の三連休初日。
ディナーのテーブルも満席の様子で、かなり賑やかな旅になりそうです
万が一にも食事にありつけなくなってしまったら大変と、早めに車内販売の「グランシャリオ弁当」を確保しておきました。
軽めのお弁当なので、パブタイムになったら改めて食堂車で何か夜食を頂くつもりです。
ロビーも満席、シャワールームも今夜分は予約一杯だったので、早々に部屋に籠ってまったりと過ごすことに。
明かりを落とすと車窓には月が綺麗に浮かびました。
パブタイムの食堂車もきっと混みそうだと、少し早目に出向いたつもりだったのですが…オープン十数分前で既にこの行列!
これほどの混雑はちょっと記憶にありません。
それでも幸い一人旅だったので、たまたま一席だけ空いていたテーブルにすぐに相席させて頂くことができたのですが、時間内に席につけず結局利用を諦めざるを得なかった方々も多かったようです。
相席させて頂いた方のお話では、今日は「三連休乗車券」なるお得なきっぷの利用可能日なんだとか。
その名の通り三連休限定ながら、JR東日本全線とエリア内の一部私鉄、それにJR北海道の函館・江差までの区間が格安で乗り放題。
更に寝台券を別に用意すれば「北斗星」にも乗ることができるので、ゆえに今夜の列車はこれほど混み合っていたようです。
思い描いていたクリスマスの旅の雰囲気とは少々違うものになってしまいましたが、それでもこんな盛況ぶりも「北斗星」の歴史の一部…と解釈すれば、やっぱり見ておけて良かったのかな?とも思います。
「ドアが開くまで4~5秒ほどお待ち下さい。戸袋に手を引き込まれないようご注意下さい。怪我をされた方がおられます…」
6分遅れでの函館到着を伝える車内放送の最後にそんな注意が添えられました。
機関車交換の作業を見ようとホームに駆け降りて行かれるお客さんも多いだけに、車掌さんも神経を遣われているようです。
少し遅れて様子見に行ってみると、やはり列車先頭はカメラを構えた方々で大変な賑わいでした。
そろそろ森駅が近付く頃、駒ヶ岳の向こうから朝陽が差し込んできました。
森駅を過ぎ、噴火湾の朝陽を楽しんでいたのも束の間、短いトンネルを一本抜けると突然車窓が雪景色に変わってしまいました。
「グッズ販売にお伺いする予定でしたが、函館到着前に車掌室までお求めに来られたお客様がおります為、残りは小型のキーホルダー1個だけとなっております…」
革製のキーホルダーや小銭入れ、懐中時計など、道内で車掌さんが販売されるオリジナルグッズはすっかりお馴染みの人気商品ですが、最近では徐々に入手難になりつつあるような気もします。
もし欲しいものがあれば、見かけた時に早めに入手しておいたほうが良さそうですね。
八雲、長万部を過ぎるまで垂れ込めていた雪雲は、洞爺に着く頃にはすっかり消えていました。
穏やかな海に浮かぶ小さな漁船、何を採っているのでしょう?
そろそろ伊達紋別に近付く頃、見上げると白鳥の群れがしばらく列車に添って飛んでいました。
伊達紋別では上り臨時特急「北斗84号」と行き違い。
函館で降りた方も多かったのか、伊達紋別を過ぎてから訪れたモーニングタイムの食堂車は思いのほか空いていました。
函館は薄曇り、駒ヶ岳あたりで晴れ間が覗くも森を過ぎると雪雲に覆われ、洞爺からはずっと気持ちの良い青空…。
噴火湾を囲む地形のイタズラか、いつもの事ながら変化の激しい空模様です。
冠雪の樽前山、今月上旬に通った時よりも白い部分が幾分拡がったような気がします。
苫小牧あたりまでの青空から一転、札幌に着く頃には前も見えないほどの猛吹雪になっていました。
僅かな距離とは言え、成程、確かに太平洋側から日本海側に抜けたんだな…と実感します。
11時31分、16分遅延で終点・札幌到着。
年季の入った青い車体の貫録には、やっぱり雪化粧が一番似合いますね。
考えてみれば11月1日の「ダイヤ変更」以降、上り列車に乗るのは今回が初めてです。
「北斗星」自体には特に大きな変更はないようですが、すれ違い列車との遭遇地点が今までとは違っていたり、意外なところで一時停車があったり…気に留めるほどのことでもないのですが、なまじ乗り慣れていただけに、何となく今までとは違う雰囲気にも感じます。
そんなちょっとした風景の変化を、クリスマスシーズンならではの車内の雰囲気と共にしっかり記録しておこうと意気込んで臨んだのですが、いざ蓋を開けれみればよもやの大遅延!
でも、そのおかげで思いがけず沢山の貴重な光景に出会えたのですから、むしろ今回はツキがあったと言うべきかも知れませんね。
車内販売のワゴンに見つけてついつい買ってしまいました。
新商品「ヘッドマークストラップ」500円也。
ちなみに裏面は「カシオペア」です。
相次ぐ車両火災などのトラブルを受けて、特急列車の減便・減速によってメンテナンス体制の強化を図った11月のダイヤ変更。
安全の為とはいえ大幅なサービスダウンを伴うものだけに、「ダイヤ改正」ではなく「変更」という言葉でリリースされていたようです。
すれ違う列車をチェックしてみると、やはり減速の影響か、遭遇地点が少しずつ函館寄りにシフトしているような気がします。
以前、北広島を過ぎたあたりですれ違っていた臨時特急「北斗91号」は若干繰り下がって南千歳到着間際に。
そして伊達紋別で行き違いの待ち合わせをしていた「北斗17号」は運休となり、代わりに設定された臨時特急「北斗97号」が、伊達紋別発車後数分ほどのところでゆっくりとすれ違っていきました。
確か満月は数日前だったでしょうか?
雲の切れ間から時折差し込む月の光が車窓の噴火湾に白く映っていました。
ダイヤ変更によるものか、それともたまたまダイヤが乱れていただけなのかは分かりませんが、今夜は大沼駅で一旦停車。
やがて函館方から下り普通列車がやってくると、入れ違うように再び動き出しました。
私もまだきちんと確認していなかったのですが、今回は津軽海峡線のダイヤは特に変更されなかったのでしょうか?
函館停車中、隣のホームには今まで通り、新青森からの特急「スーパー白鳥33号」が入ってきました。
青函トンネルの本州側、津軽今別駅を通過中。
北海道新幹線工事の関係で、構内の線路配置も、ホームの位置もいつのまにか随分変わってしまっていたようです。
まっすぐ伸びる新幹線の高架橋から大きく左に分かれると新中小国信号場。
これもダイヤ変更によるものか、今回限りかは分かりませんが、数分ほど停車して下り貨物列車をやり過ごしました。
道内列車の安全対策としてのダイヤ変更ですから、本州側に影響が及んでいることはないでしょう。
以前と比べると青森時点で約10分ほど遅れているようですが、恐らくは単なる遅延だろうと思います。
青森を出て数分ほど。
多くの貨物列車が集う深夜の東青森駅の構内には、しばらく前まで「北斗星」を牽いていた電気機関車「EF510」の仲間の姿がありました。
平成22年夏から本州内で「北斗星」「カシオペア」を牽いてきた全15両の「EF510」ですが、今年3月、本業である寝台特急運用の合間に請け負っていた首都圏の貨物運用から撤退。
余剰となった一部車両がJR貨物に移籍して、日本海側ルートで活躍を始めたそうです。
車体側面の大きな流星マークは消されたものの、塗装は「北斗星」時代からの青色のまま。
そして青森信号場~東青森駅間の僅かな距離ですが、今でも「北斗星」と同じ線路を走っていることになります。
新天地での活躍を頼もしく思いつつも、すっかり遠くに行ってしまった仲間の姿を見るとちょっと複雑な気持ちになります。
「停電の為、しばらく停車致します…」
朝一番の車内放送で定刻通りと聞いて安心したのも束の間、6時38分、郡山に着いたところで突然足止めされてしまいました。
倒木により架線が切れて白河~黒田原間が不通、復旧には相当時間が掛かる見込みとの事。
どうやら昨晩からかなり荒れていたらしく、福島あたりで目覚めてから車窓はずっと本格的な雪景色です。
とりあえず食堂車を訪れて、ゆっくり朝食を済ませて、食後の紅茶を頂いてもまだ動く気配はありません。
「お急ぎの方、今日中に確実に東京まで行かれたい方は、8時18分発の『やまびこ122号』に振替輸送を致します…」
車掌さんの放送にも長期戦覚悟の空気が漂います。
もとより私は振替輸送があったとしてもこのまま「北斗星」に乗り続けるつもりでしたが、ほどなく8時30分、「間もなく発車します!」との車内放送が。
それも現場の皆さんが復旧に向けて必死の努力をして下さっているお陰なんですが、こういう時、まぁ当分動かないだろうと高を括って構えていると、突然運転再開の報が届いてビックリすることはよくあります。
8時33分、1時間54分遅れで郡山を出た後も、矢吹、白河と繰り返し臨時停車。
まだ前に列車が詰まっているのでしょうか?
遅れを徐々に拡げつつも、少しずつ先を目指して進んでいきます。
不通になっていた白河~黒田原間の県境付近はやはり重そうな雪が結構積もっていましたが、栃木県に入るとほどなく雪は消えてなくなり、列車もようやく順調な足どりに戻りました。
黒磯には下り貨物列車が2本ほど、運転再開を待っているのが見えました。
宇都宮には11時45分、3時間35分遅れでの到着です。
雨に煙る車窓に一瞬、気になるものが見えたような…!?
大遅延で今日の予定も流れてしまったので、時間つぶしも兼ねて後で様子見に行ってみようと思います。
大宮駅の構内にさしかかると、隣には高崎線方面からの特急「草津2号」がちょうど並んで入ってきました。
この先上野まで同じ線路を走っていく列車です。
13時06分、大宮発車。
定時なら向こうの発車時刻ですが、今日は「北斗星」に先を譲ってくれたようです。
「北斗星」の大宮発車は通常9時12分。
12月14日発の便からは冬季限定の減速運転で9時34分発に繰り下がっていますが、それと比べても更に3時間半以上の遅延です。
終点・上野には13時33分、実に3時間38分遅延での到着となりました。
これだけ遅れてしまうと到着後の予定は当然全てキャンセルですが、「北斗星」自体の取材と思えば充分過ぎるほどの大収穫です。
勿論、特急券は払い戻したりはせずに記念に取っておくことにします(笑)。
やっぱりそうでした!
大宮手前で「北斗星」の車窓から煙が見えたような気がしたのですが、案の定、車両工場の試運転線では蒸気機関車の試運転が繰り返されていました。
ちなみにこの試運転線、鉄道博物館のすぐ脇に敷設されているので、運が良ければまるで博物館のアトラクションのように間近でこんな光景を見ることができます。
動いていたのは、平成26年から盛岡地区で運行予定の「SL銀河」用として復元された「C58 239」。
つい先日、初めてボイラーに火が入れられたばかりだそうですから、まさにようやく動けるようになったばかり、ほぼ初披露と言って良い位のタイミングだったようです。
「北斗星」で大遅延に巻き込まれると、思わぬご褒美がついてくる…こういう妙な幸運?に今まで何度も遭ってきた気がします。
せっかく取れた「北斗星」B個室ソロをキャンセルしてまで往路「はまなす」を選んだのは、実はこれがお目当てでした。
寝台特急「ゆうづる」…青函トンネル開業前まで活躍していた懐かしのブルートレイン、一夜限りのリバイバル臨時列車です。
現役時代の「ゆうづる」は常磐線経由で上野~青森間を結び、更に青函連絡船に接続して本州~北海道連絡ルートの一翼を担う存在でした。
加えて、B寝台車や2人用A個室「ツインDX」など「北斗星」客車の多くが元を辿れば「ゆうづる」からの転用組ということもあって、やっぱり「ゆうづる」と訊けば「北斗星」のご先祖様…と今でも思ってしまいます。
故にせめて一目だけでも…と、上京予定を少しだけ変えて、時間に合わせて青森駅に降りられるよう調整したわけです。
震災の影響で常磐線が未だ一部区間不通の為、今回の「ゆうづる」はいわき発~常磐線・水戸線・東北本線・IGR・青い森鉄道経由で青森まで、更に津軽海峡線を経由して、現役時代を通じても初めて北海道に乗り入れるという珍しいルートでの運行。
12月1日未明、定刻5時39分から少し遅れて「はまなす」が到着すると、入れ違うように「ゆうづる」はまだ見ぬ北の大地に向けてゆっくりと旅立っていきました。
新青森から朝一番の「はやぶさ」に乗ると、本来乗る予定だった「北斗星」よりも先に上野に着いてしまい、改めて時代の変化をしみじみと感じさせられました。
勿論、復路は予定通り、「ゆうづる」の軌跡を偲びつつ上野から「北斗星」で帰ります。
今回は東京1泊、翌2日の下り「北斗星」で帰札の途に。
上野駅はもうすっかり年の瀬の風情でした。
列車の中もクリスマスの趣。
食堂車の入口には緑色のリースが、テーブルランプには赤いリボンが掛けられていました。
明朝、車窓が雪景色ならきっと絵になりそうです。
列車に揺れはつきもの…運転士さんを責めるのは酷でしょう。
とは言え、やっぱり飲み物には要注意です!
出発前からの寝不足が祟って仙台到着前には寝入ってしまいましたが、それでも深夜、上り「カシオペア」「北斗星」とすれ違う前にはしっかり目が覚めるのですから我ながら感心してしまいます。
今回はいつもよりも若干手前、いわて沼宮内駅あたりで上り「北斗星」が現れました。
未明の青森駅での機関車交換。
上野から牽いてきた先頭の電気機関車を切り離し、最後尾に別の電気機関車を連結して、進行方向を変えて再び動き出した瞬間、いま切り離したばかりの機関車がすぐ横を並んで走っていくのが見えました。
向こうの機関車はホームのはずれあたりで一旦停車、そのまま「北斗星」が出ていくのを見送っていました。
この後、ポイントが切り替わるのを待って車両基地へと回送されていくのでしょう。
青森を過ぎてから再びベッドに潜り込み、目が覚めると函館駅に着くところでした。
SL列車用の茶色い客車、恐らく急行「はまなす」に繋がれてきたか、これから繋がれて回送されていくとおぼしき「北斗星」の寝台車、それにリゾート列車「クリスタルエクスプレス」…。
広い構内には珍しい列車たちが沢山停まっているのが見えました。
函館山もそろそろ冬景色。
今朝は定刻6時43分から数分遅れての出発です。
函館では重く垂れ込めていた雲がほどなく切れ始めました。
出発前からの寝不足続きで、このまま天気が悪ければ開き直って札幌まで寝て過ごせるのに…と妙な期待?も脳裏をよぎったのですが、晴れてしまうとなると話は別、カメラを握って意識はすっかり取材になってしまいます。
大沼国定公園、小沼の湖面に冠雪の駒ヶ岳が綺麗に映っていました。
森駅を過ぎ、噴火湾が見える頃には眩しい朝陽がはっきりと差し込んできました。
実に素晴らしい風景ですが、写真に撮ろうとすると露出補正に泣かされる場面です。
伊達紋別で行き違う上り特急列車。
7月の火災事故の影響で、いつもの特急「北斗4号」が運休となり、代わって速度の遅い旧型車両による臨時特急「北斗84号」が現れました。
通常このルートでは見ることのない、特徴的な角張った顔つきが一際目を惹きます。
雪も少なく、比較的温暖といわれる伊達紋別。
冬と言うより、秋に戻ったような穏やかな車窓風景が広がります。
既に退役、廃車待ち…でしょうか?
東室蘭を過ぎてほどなく、JR貨物の車両基地には懐かしいディーゼル機関車が佇んでいました。
樽前山は雪化粧、牧場には一頭の白馬が…。
苫小牧を過ぎて勇払原野に差し掛かる頃、新千歳空港へと降りる飛行機が列車の真上を横切っていきました。、
札幌に近付くにつれて急に天気が崩れてきました。
線路際に雪も見え始め、また秋から冬へと進んでしまったかのような風景です。
終点・札幌には11時15分、今回もほぼ定刻通りの到着でした。
ひと月ぶりの「北斗星」ですが、間に往復飛行機利用の本州出張を挟んだので気分的には随分久々のような気がします。
久々と言えば、今夜乗務されているアテンダントさん。
「確か最後にお会いしたのは、周作さんが『北斗星』4連泊で青森に行かれたって仰ってた時ですよね!?」と言われましたから、どうやらもう2年近くもご無沙汰だったようです。
恐らくコックさんやアテンダントさんが同じ列車に乗務されるのは単純計算でも数日に一度、車掌さんになるとひと月に一度とか、ふた月に一度とか伺いますから、リピーターとはいえそう度々お目にかかれるものではありません。
一期一会…と言葉にするといささか使い古された感もありますが、時々その言葉の意味がずっしりと感じられたりもします。
星空と夜景が綺麗な夜でした。
車窓から写真に撮るのはなかなか難しいのですが、今回はそこそこ良い雰囲気に撮れた気がします。
パブタイムの食堂車は結構賑わっていましたが、食後のコーヒーを頂く頃にはだいぶ閑散としてきました。
最後の一人になってしまうと何となく申し訳ないので、他のテーブルの様子も窺いつつそろそろ席を立とうとすると、ちょうど青函トンネル最深部の青い光が流れ去っていきました。
深夜の青森到着前、車窓に広がる車両基地の構内には、電気機関車がブルートレインの客車を従えて、何やら発車準備を整えているような雰囲気で停まっているのが見えました。
「あけぼの」でも「はまなす」でもないこの時間帯、普段は見られない珍しい光景です。
青森を過ぎてすぐに床に就いて、目が覚めると福島停車中でした。
いつも「北斗星」に乗るとついつい意識が取材的になって、結局殆ど寝る暇もなくなってしまうのが常ですが、今回ばかりは出張続きで疲れが溜まっていたのか、いつになく熟睡してしまいました。
終点・上野までの道中、今朝はいつもより少しゆっくり、まったりと過ごすことにします。
郡山が近付く頃、田園風景の向こうから朝陽が昇りはじめました。
郡山発車後、車窓左手に見える車両工場の構内には、春頃まで常磐線の「スーパーひたち」に使われていた特急電車が置かれていました。
いつも廃車になった古い車両の解体作業が行われている場所です。
今見ても古さを感じさせない斬新なデザインの電車ですが、考えてみれば既にデビューから四半世紀…もう引退しても不思議ではない時期なんだと思うとちょっと複雑な心境です。
同じ車両工場の構内には、それとは別に綺麗に整備された「スーパーひたち」の姿もありました。
よく見ると窓の下にはオレンジ色のラインが追加されています。
巷では色々噂は流れているようですが、どうやらあの車両は第二の職場を見つけることができたようです。
白河手前で那須連山が見えてきました。
稲の刈取りもすっかり終わり、車窓は穏やかな晩秋の風景です。
終点・上野到着前、尾久駅の構内にもう一本の「北斗星」が停まっているのが見えました。
気になるので後で様子見に行ってみることにします。
今回は定刻通り、終点・上野には9時38分到着。
ほどなく隣のホームには高崎線方面からの特急列車が入ってきました。
この電車も国鉄時代の製造で車齢30年超、そろそろ引退も囁かれているようですから、「北斗星」との顔合わせもいずれは貴重な記録になりそうです。
さて、尾久駅に戻ってみると、件の「北斗星」客車の先頭には青い電気機関車が繋がれていました。
これまでにも何度か見たことがありますが、どうやら運転士さんのハンドル訓練用の試運転列車のようです。
詳しい時刻や運転予定は分かりませんが、「北斗星」の車窓からここに停まっている寝台車が見えた時にはその後運転されることが多いような気がします。
何本か普通列車をやり過ごした後、試運転列車はゆっくりと大宮方面へと発車していきました。
今はなき寝台急行「銀河」を思い出すような、懐かしい雰囲気の列車に出会えてちょっと嬉しくなりました。
ところで翌11月2日、東京駅から何年ぶりかのブルートレインが出ると訊いて、札幌に戻る前に少しだけ覘きに行ってみることにしました。
団体専用・この日限りの臨時寝台急行「天の川号」…東京発、上越線経由の秋田行きという、ちょっと珍しい経路です。
案の定、ホーム上は大変な賑わいでしたが、少し離れて眺めていると、まるで遠い昔の夜行列車全盛期に戻ったような気分になりました。
ちなみに前々夜、青森の車両基地に停まっていたのはどうやらこの列車だったようです。
実を言えば東京発のブルートレインには数えるほどしか乗る機会は無かったのですが、それよりも東京で会社勤めをしていた頃、残業帰りにこのホームにフラッと立ち寄っては、既に数えるほどにまで減ってしまっていた夜行列車を見送っていたのを思い出します。
そういえば、あの頃はまだ「はやぶさ」も新幹線じゃなくてブルートレインだったんですよね。