往路は一日一本のエア・ドゥ新千歳~小松直行便を初めて利用。
えちぜん鉄道と勝山左義長祭りの取材を終えて、福井から東京経由で帰札の途に就きました。
寝不足続きの旅疲れで車中ではいつもより早めに休んでしまいましたが、おかげで明け方、早めに目覚めて素晴らしい景色が見られたのですからむしろ幸運だったのかも知れません。
これまで数えきれないほど乗り続けた中でも、とりわけ印象深い今回の朝の風景でした。
福井から東京に向かう途中、今回は敢えて長岡に宿を取ってみました。
最終の新幹線で東京まで行ったとしてもその晩はどのみち宿に入るだけですし、それなら途中で降りてしまった方が移動も楽な上、宿代の相場も東京よりは手頃。
在来線から新幹線への乗り継ぎなら、翌日の列車であっても乗継割引が適用されるというのも好都合です。
そして何より、いよいよ来月で定期運行終了の寝台特急「あけぼの」の機関車交換…この貴重な場面が観られるのも多分これが最後の機会になりそうです。
朝の新幹線で長岡を発ち東京で用事を少々。
夜になって上野駅13番線ホームに向かうと、車止めのところにこんなポスターが貼られていました。
先月1月17日の朝、郡山を過ぎた上り「北斗星」の車窓から見た「SL銀河」の客車の撮影会。
この客車がフジテレビの震災復興イベントに関連して、釜石発上野行きの「SLギャラクシー」として上京するのに合わせて企画されたようです。
残念ながら私は観に行けそうにありませんが、こういう列車が遠路東京までやってくると思うだけでも夢がありますよね。
上野を出てほどなく、尾久の車両基地には出庫を待つ今夜の「あけぼの」の姿がありました。
この場所で、金沢行きの寝台特急「北陸」と2本並んで停まっていたのがつい先日の事のように思われます。
いつものように郡山を過ぎたあたりでパブタイムの食堂車へ。
さすがに今回は少々疲れ気味。
食事を終えたら少し早めに休むことにします。
今回ばかりはゆっくり寝て過ごすつもりでしたが、早めに休んだからか青森あたりで目が覚めてしまいました。
それでも短時間ながら熟睡できたからか、身体は随分楽になった気がします。
青函トンネルを抜けると、紫色に染まりつつある東の空には細い月。
そのすぐ傍には一際明るく金星が輝いていました。
後で調べてみると、この日は月と金星が特に接近する貴重なタイミングだったようです。
やがて函館山が見えてくると、海の向こうからちょうど朝陽が昇り始めました。
日毎に少しずつ変わり続ける日の出の時刻、加えて天候や列車の運行状況等々も関わって、何百回と乗り続けても同じ朝の風景に二度と出会うことはありません。
一期一会…と言葉にするとベタな表現になってしまいますが、この風景を見ることができただけでも今回乗った甲斐はあったのかな?と思いました。
数分遅延で函館到着。
先月は激しい雪に隠れてしまった小沼湖畔からの駒ヶ岳、今回は雲ひとつない穏やかな青空です。
森ですれ違う上り貨物列車。
いつもより少し遅れていたようで、「北斗星」がホームを離れる頃になって現れました。
波静かな噴火湾。
先月は朝焼けの淡いピンク色でしたが、今朝は澄んだライトブルーの風景です。
落部駅での後続特急「スーパー北斗1号」通過待ち。
来月のダイヤ改正以降は「北斗星」よりも先に函館を出るようになるので、特急が特急を追い抜く珍しい風景ももうすぐ見ることができなくなってしまいます。
静かな八雲駅の、とりわけホーム末端の素朴な風景は結構お気に入りです。
お互い少しずつ遅れているのか、いつもと少し違うポイントですれ違った気がします。
長万部から洞爺へ。
それまでの平坦区間から一転、立ちはだかるような鋭い山に向かって駆け上っていくこのコーナーは特に印象的な区間です。
伊達紋別で上り臨時特急「北斗84号」と行き違い。
昨夏の車両火災事故に伴う運休列車の代替として、事故車両よりも一世代前の旧型車両で組まれた代走臨時列車です。
既に半年以上も続いているこの状態、未だ通常運行再開の報は耳にしませんから、来月のダイヤ改正後もまだしばらくはこの風景が見られることになりそうです。
伊達紋別を出ると海が近付き、線路際にまでボートが並びます。
このあたりも大好きな風景です。
東室蘭手前、白鳥大橋が見えるあたりで石油貨物列車とすれ違いました。
今ではこの路線が道内唯一となってしまった鉄道による石油輸送ですが、廃止の噂も絶えないようで気掛かりです。
東室蘭を過ぎた後の貨物会社の車両基地。
件の赤い旧型機関車「DD51」…よく見ると他形式も混じっていますが、先月よりもここにいる仲間が増えたようです。
車窓を眺めているうちに食事に行くのがすっかり遅くなってしまいました。
今回もまた貸切状態、ご迷惑にならないよう急いで頂いてしまわないと…。
雪の中でも元気な馬たち。
いよいよ終点・札幌間近。
ここ最近は乗るたびに遅延続きでしたが、今回は遅延は僅かに数分…ほぼ定刻の順調な旅でした。
藻岩山と、テレビ塔と、その手前には巨大な雪山…。
まだまだ雪は深いものの、ホームに降りると4日ぶりの札幌はすっかり春の陽気でした。
フリーランスの特権で極力週末を避けるようにはしているつもりなんですが、それでもなぜか旅程が週末に重なってしまうこともよくあります。
前回、昨年暮のクリスマス3連休の下り列車が大変な混雑ぶりだっただけに、今日もどうなることかと戦々恐々だったのですが、いざ乗ってみると車内は意外なほどひっそりとした雰囲気でした。
とは言え、覘いてみるとディナーのテーブルは満席、いつもはお弁当やお土産品を並べている一番厨房寄りの2人席までディナー客で埋まっていましたから、決してガラガラというわけでもないようです。
乗車率と言う意味での混み具合と、食堂車やロビーで感じる賑わい感は必ずしも比例しないのが面白いところで、こればかりは何度乗ってもなかなか分からないものです。
大宮を出てほどなく、車窓左手に広がる車両工場の構内に1両だけ寝台車が見えました。
「北斗星」の11号車、でしょうか?
発車後まずは車内販売の「グランシャリオ弁当」で小腹を満たして、パブタイムの食堂車は軽めの夜食で済ませるのが最近の下り列車でのパターンです。
黒磯を過ぎると街の明かりも少なくなって、カーブに差し掛かるたびに機関車の前照灯や前の客車の窓明かりが部屋の窓にも綺麗に浮かびます。
この夜は月もよく見えていました。
郡山での磐越東線との同時発車。
この日は向こうのお客さんの表情まで分かるほど、ピッタリ真横に並んで発車していきました。
郡山を過ぎたところでパブタイムの食堂車へ。
お気に入りのピッツァ・マルゲリータはパリッとした薄手の生地で、お腹一杯というよりも夜食に丁度良い位のボリュームです。
盛岡を過ぎてしばらくしたところで上り「カシオペア」とすれ違い。
続いて上り「北斗星」も。
パンタグラフの激しいスパークが印象的でした。
北上するにつれて外は本格的に吹雪いてきたようです。
デッキの中にまで吹き込む雪も、冬の汽車旅の風物詩です。
青森駅での機関車交換を見届けようと最後尾1号車のデッキに出てみると、列車が巻き上げた雪がすっかり窓を塞いでしまってまるで前も見えない状態。
それでも僅かな隙間を見つけてカメラを向けてみたら、意外と面白い画が撮れました。
実はこんな状態でした(笑)。
冬場の旅ではよくあることですが、最後尾からの眺めを期待して観に行くとガッカリさせられることもしばしばです。
海峡線に入り、津軽今別駅を通過。
暗闇の中、構内では新幹線駅の工事が進められているようでした。
青函トンネルに入ったあたりで横になり、目が覚めるともう函館に着くところでした。
ホームに降りて機関車交換を観に行くと、まだ明けきらぬ空に白い月が浮かんでいました。
函館を過ぎると次第に空が明るくなってきました。
ピンク色の朝焼け空に丸い月、パステル画のような風景でした。
おなじみ大沼国定公園、小沼湖畔のビューポイント。
突然激しく雪が降りだし、駒ヶ岳どころかそこに湖があることすら分からない位でした。
穏やかな噴火湾。
落部駅で後続特急「スーパー北斗1号」の通過待ち。
普段は人影のない駅ですが、この日は何人かの方々が上りホームから列車にカメラを向けているのが見えました。
八雲の手前、前年8月17日の大雨による貨物列車脱線事故の現場では今も工事が続けられていました。
線路の復旧に留まらず、水路の整備など本格的な対策が施されるそうです。
列車は最徐行で通過していきます。
多少荒れたのは大沼国定公園のあたりだけで、その後はすっかり良い天気に恵まれました。
数分遅延でほぼ順調に走り続けていましたが、洞爺の手前で突然の信号待ち。
その後、いつもと違うホームに入ったので何だろうと思っていたら、ほどなく後続の貨物列車がやってきて、そのまま追い抜いて行ってしまいました。
機関車の保安機器不具合…と言うと、やはりATSの故障でしょうか?
このまま洞爺でしばらく停車し、安全確保要員の到着を待って発車するとの車内放送が流れました。
安全確保要員が「北斗84号」で到着したら発車します…とのアナウンス。
どういう手配で、どこから駆け付けてきて下さったのかは分かりませんが、「北斗84号」の発車を見送ると、数分ほどで「北斗星」もゆっくりと動きだしました。
結局、洞爺発車は30分ほどの遅延に。
機関車不具合ともなると相当時間が掛かるだろうと覚悟はしていたのですが、思ったよりも随分早い運転再開となりました。
有珠山、昭和新山が見えるとまもなく伊達紋別。
伊達紋別を過ぎてからモーニングタイムの食堂車に行くと、先客は3人ほど。
皆さんほどなく食事を終えて席を立たれたので、すぐに貸切状態になってしまいました。
東室蘭を過ぎた後、右手に見える貨物会社の車両基地には、今となっては懐かしい赤い凸型のディーゼル機関車「DD51」の姿がありました。
色は違えど「北斗星」を牽いているのと同型の機関車ですが、向こうでは新型機関車に押されてすっかり絶滅危惧種になってしまったようです。
樽前山と牧場の風景、今回も馬に会えました。
苫小牧名物、製紙工場の大煙突。
晴れ渡った空に線を描くように白い煙が流れていました。
30分少々の遅延で終点・札幌に到着。
ちょうど構内の端の方から、この列車を牽いているのと同じ「DD51」が1両だけ、客車も牽かずに苗穂方面に走り去っていくのが見えました。
多少の遅延はありましたが、むしろ遅延のおかげで見ることができた貴重なシーンも沢山ありました。
往復共に成果大、いつになく手応えのある新年最初の「北斗星」の旅でした。