イラストレーター鈴木周作【公式】

北斗星乗車記・乗車記録(#321~#325) Boarding record and Travel diary of Hokutosei

▼~H20/2008.11.28(320回目) ▲H21/2009.2.2(326回目)~ ■乗車記録メニューへ

通算 乗車日/列車 乗車記
#325
2009.1.31
北斗星(上り)
札幌→上野
(B下)

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北斗星大雪・強風で遅延4時間超!
 汽車が停まる気配にふと目をを覚まし、耳馴れないエンジンの音に気付いてカーテンを開けてみると隣には「カシオペア」が停まっていました。
 札幌発車は我らが「北斗星」の1時間前、勿論普段なら途中で並ぶ事など有り得ない列車です。
 出発前の天気予報によれば、低気圧の発達により東北地方は大雪、関東では強風が明朝まで続く見込みとか。
 どうやら長期戦になりそうです。



北斗星

 駅名標を見るまでもなくホームの雰囲気から盛岡と判りました。
 時計を見れば午前3時、少なくとも「カシオペア」は随分前から停まっているようです。
 時間が時間だけに車内放送などもなく、詳しい状況は判りませんが…まぁ、これも良い旅の想い出でしょう。
 4時になってようやく「カシオペア」が発車。
 後を追うように4時10分、「北斗星」も動きだしました。

北斗星

 4時45分、北上停車。
 隣に見慣れない貨物列車が停まっていました。
 定刻ならそろそろ仙台に着く頃。
 荷物をまとめ、コートを羽織って廊下に出てきた乗客たちが、駅名標を見ては溜息をついて寝台に戻っていきます。

北斗星

 5時22分、一ノ関停車。
 普段は乗客の乗り降りを扱わない駅ですが、大幅遅延に絡んで何か特別な事情があったのでしょう、乗客一組が駅員さんの誘導で降りていくのが見えました。

北斗星

 朝6時前、空が少しずつ白み始め、食堂車の物置のシャッターを開ける音がロビーにまで聞こえてきました。
 雪雲はすっかり切れたようです。

 「1時間42、3分の遅れです」と、ロビーを通り掛かった車掌さんが教えてくれました。
 どうやら昨年3月に廃止された旧「北斗星4号」に近い時刻で走っているようです。
 いつもなら今の季節、真っ暗なうちに通過してしまう松島湾が車窓に見えてちょっと嬉しくなしました。

 6時25分、「岩手県南地方大雪の為、只今1時間45分ほど遅れて運転しております」と朝一番の車内放送。
 6時30分、通常通り食堂車ではモーニングタイム営業開始。
 6時40分、仙台到着。
 7時頃、岩沼手前、雪化粧の田園の向こうから見事な朝陽が顔を出しました。

北斗星

 県境を越え福島盆地に降りる途中の大眺望はお気に入りの車窓風景ですが、この区間も定刻では冬場は日の出前。
 この素晴らしい雪景色が楽しめるのも今日ばかりの幸運です。

北斗星

 福島7時46分、郡山8時19分、遅れているなりに順調に走り続けましたが、9時17分、黒磯に着いたところで動かなくなってしまいました。
 この先の強風で全列車運転見合わせ…との事。
 30分ほど様子を見て、9時48分、時速25kmの徐行運転で運転再開です。

北斗星

 ホッとしたのも束の間…9時55分、ひと駅先の那須塩原で再び停車。
 いよいよ本格的に足止めされてしまったようです。

 30分ほど過ぎても運行再開のメドは立たず、10時33分、「ご希望の方は特急料金を払戻ししない条件で新幹線振替を行います」と車掌さんから車内放送。
 上り列車が遅れた時にはしばしば採られる救済措置です。
 この「払戻ししない条件で…」というあたり少々釈然としないものがありますが(だって今から新幹線に乗り換えても上野到着は定刻より2時間以上遅れるわけですから…)、少しでも先を急ぎたい乗客の多くは、ドアが開かれると同時に荷物を抱えてホームに降りていきました。
 車内に残った乗客も「この先、更に遅れが予想されますので出来るだけ新幹線を…」と再三強く勧められたのですが、もとより私は何時間遅れようとも「北斗星」に乗り続ける覚悟。
 ただ、運転打切りになって全員降ろされてしまったら困るなぁ…と妙な心配をしていたのですが、幸いそういう事態には至りませんでした。
 (仮に乗客を全員降ろしたとしても、客車と乗務員を終点まで届けなければならないから手間はそう変わらないのでしょう)

 10時56分、ドアが閉められ、車掌さんが車内を回って残った乗客の人数確認。
 乗務員室の前を通り掛かると、「47名…」と無線の声が聞こえました。

北斗星

 11時30分、「風規制が解除されました。先行列車から順次運転再開しております」とアナウンス。
 我らが「北斗星」も11時38分になってようやく動き出し…と思った途端、非常ブレーキが掛かって再停止!?
 11時42分、今度こそようやく出発です。

 12時12分、宝積寺停車、この先再び25km制限との事。
 12時39分、宇都宮到着、4時間29分遅れ。
 12時43分、宇都宮発車後、「大宮、上野の到着予定時刻は指令と打合せの上、後程ご案内致します」とアナウンス。
 数分後、「大宮13時30分過ぎ、上野14時丁度」と再度案内が流れました。

北斗星

 強風のおかげか関東地方は見事な快晴。
 こんな気持ちの良い空を眺めながら、昼過ぎまでまったりと寝台車に乗り続ける機会なんてそうありません。
 そろそろお腹も減る頃ですが、こういう事もあろうかと札幌で菓子パンを買っておいたので助かりました。
 13時37分、大宮到着、程なくして慌しく出発。
 指令との打合せが上手くいっていたのか、途中足止めされることも無く順調なラストスパートです。

 13時55分頃、尾久通過。
 ひと足先に長旅を追え、車両基地に戻っていく「カシオペア」が隣をかすめていきました。

北斗星

 こんな風に言うと関係者の方に怒られそうですが、これほど遅れると普段見れない風景に出会えたり、珍しい経験ができたりと、純粋にスケッチ取材として捉えると実に大きな収穫が得られたりもするものです。
 14時丁度、約4時間20分の遅れで上野到着。
 塞翁が馬…とでも言いましょうか?大遅延のおかげでまた少し「北斗星」という汽車を知る事ができたような、ささやかな満足感すら抱いてしまう今回の旅でした。

 ところで今回、「札幌・東京フリーきっぷ」(札幌~から「北斗星」往復+東京圏JR乗り放題で\29,500也)を使ったのですが、遅延に伴う払戻しについて上野駅のみどりの窓口で訊ねてみたところ、特急料金分として2,890円(だったでしょうか?)を返金して頂きました。
 ところが確認してみると、以前同じきっぷで下り列車が大幅に遅れ、札幌駅の精算所に申し出た時の払戻し額は1,250円だったようです。
 きっぷに添付の「ご案内」でも払戻しについては何も触れられていないので分かりませんが、本当はどちらが正しかったんでしょうか?
 何となく腑に落ちません…。

北斗星

 余談ながら夕方、折返し札幌行きの「カシオペア」の様子を見に再び上野駅まで行ってみると、折返し整備が間に合わず発車が遅れるとのアナウンス。
 「定刻16時20分のところ16時50分頃の見込み」と訊いて、おぉ懐かしの「北斗星1号」のダイヤだ!と勝手に喜んたものの、結局それにも間に合わず「17時40分見込み」と再度訂正されていました。
 13番線の待合スペース「五ツ星広場」に腰を下ろし待つ事1時間余…駅員さんの動きや構内放送が慌しくなり、そろそろ入線かな?という気配が漂い始める頃、見覚えのある乗務員さん達がホームの定位置に並ばれる姿が垣間見えました。
 中には今朝…というか今日の昼過ぎに上野に着いて、そのまま折り返される方もおられるでしょう。
 つくづく大変なお仕事だなぁ…と思いつつ、私たちがいつも旅を楽しませて頂けるのもこの方々のお陰なんだなと、こういう事があると改めて考えずにはいられませんね。


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#324
2009.1.7
北斗星(上り)
札幌→上野
(B1)

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北斗星「北斗星」ならではの良さ

 果たして「カシオペア」も実に良い列車でしたが、個人的な思い入れや情緒論を抜きにしても、乗り比べてみるとやっぱり「北斗星」には「北斗星」ならではの居心地の良さというのはあるようです。
 5日前に初めて乗った「カシオペア」の印象も薄れぬうちにまた乗る機会に恵まれた「北斗星」、奇しくも「カシオペア」でお世話になったアテンダントさんが今日はこちらに乗務されていました。



北斗星

 それにしても「北斗星」のこの居心地の良さって何だろう?
 …と色々考えていた時、ふと気付いたのがこの足元の広さ。
 自由に立てて、靴もスリッパも楽に脱げて、大きな荷物を置く余裕もあって…ベッドメーク後は靴を脱ぐのがやっとのスペースしか残らなかった「カシオペアツイン」に比べると、このあたりが大きな違いなのかな?という気がしました。

 「ゆとり」という言葉の意味を、専用トイレ・洗面台や衛星放送といった設備の充実に求めるか?
 それとも自由に動ける空間的、心理的余裕に求めるか?
 そのへんの嗜好が「カシオペア」派と「北斗星」派の分かれ目かも知れませんね。

北斗星

 今夜はディナータイム2回目の予約が無かったようで、20時15分、いつもより随分早くパブタイムが始まりました。
 私が乗った便に限って言えば、それまで以上に食堂車が賑わうようになった昨年3月のダイヤ改正・減便以降、多分始めての事だったと思います。
 それでも1回目のディナーは結構席が埋まっていましたから、オフシーズンの平日としてはそれなりの賑わいと言うべきでしょう。

 シェードの縁に多少痛みが見え始めていたテーブルランプ、いつのまにか簡単に補修されていました。
 20年も走り続けてきた客車だけに、こういう調度品のメンテナンスも大変なんでしょうね。
 いつまでも大切に使い続けて頂きたいものです。

北斗星

 郡山あたりで空が白み始め、白河から那須に向かうあたりでようやく日の出を迎えました。
 少し遅めに出掛けたモーニングタイムの食堂車。
 車窓を覘くと冬晴れの空に冠雪の那須連山が輝いていました。

北斗星

 関東平野に入ってから、ふと見上げると飛行機雲が幾条もの筋を描いていました。
 こんな絵に描いたような飛行機雲を見るのは始めてかも知れません。

北斗星

 定期検査でも受けるのでしょうか?
 大宮駅に着く直前、工場の中に「北斗星」の客車が1台だけポツンと停まっていました。

北斗星

 定刻通り9時41分、上野駅13番線に到着すると、入れ違うように隣の14番線から「カシオペア」が車庫に向かって引き上げていきました。
 一度乗ってしまえば「カシオペア」にも途端に愛着が湧いてしまうのですから我ながら現金なもの。
 でも、やっぱり私の居場所は「北斗星」なんだろうなと、今になってしみじみそう思っているところです。

 もし死ぬ前にあと1回しか汽車に乗れないとしたら迷わず「北斗星」に乗るでしょう。
 では、もしあと3回しか乗れないとしたら…。
 少し迷うかも知れませんが、それでも3回とも「北斗星」を選んでしまうんだろうなぁ。
 「カシオペア」も、「トワイライト~」も本当に良い列車だったんですが、私にとっての「北斗星」は結局そういう存在なんでしょうね。


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(番外編)
2009.1.2
カシオペア(下り)
一ノ関→札幌
(A2)

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カシオペア「カシオペア」初体験!

 「北斗星」には323回、でも「カシオペア」にはまだ一度も乗ったことが無いというのも考えてみれば不思議な話。
 このまま一生乗らずに終えるのも面白いかな?とも思いましたが、たまたま青森・八戸に帰省する機会があったので、試しに一度乗ってみる事にしました。
 勿論、一ノ関・盛岡に停まる「北斗星1号」が無くなってしまった現在となっては、岩手・青森方面から札幌に戻るにはこの列車が最も便利、という現実的な理由もあります。
 果たして「北斗星」リピーターが初めて触れた「カシオペア」の印象は…?
 少し多めの写真と共にご紹介したいと思います。



カシオペア

 何はともあれまずは食堂車。
 パブタイムメニューは「北斗星」と同じようです。
 同じと言えば、乗務されているアテンダントさんもいつも「北斗星」でお世話になっている方々ばかり。
 「カシオペアにも乗られるんですね~!」と驚かれてしまいました。

 伺えば「カシオペア」では全ての個室にドリンクのルームサービスがあるので、「北斗星」よりもかなり大人数で乗務されているとか。
 また、食堂車だけでなく、編成の反対側にあるラウンジカーにもベースがあるそうですから後で覘いてみるとしましょう。

カシオペア

 ケーキセット、700円也。
 盛り付けも「北斗星」と同じですが、食器は「カシオペア」のロゴ入りの特製品です。

カシオペア

 2階が客席、1階は通路と業務用室。
 シンプルで清潔、そして包まれるような閉塞感…「落ち着き」と言った方が良いのでしょうか?そんな感じのデザインです。
 真下にあたる1階通路の天井高さを確保する為、左側の2人席の床が一段高くなっているのがちょっと不思議な感じです。

カシオペア

 ラウンジカーは先頭12号車。
 3号車の食堂車から歩くと随分遠く感じますが、この空間を楽しみたいお客さんなら不満を抱かれる事は無いでしょう。
 デッキの仕切扉が全て自動ドアなので、列車内の移動が「北斗星」より幾分楽なのは確かです。
 床下のエンジンの音と振動は少々気になりますが、暗めの照明が夜汽車らしくてなかなかの雰囲気です。

カシオペア

 展望式のラウンジカーのすぐ前では屈強な電気機関車が奮闘中!
 パンタグラフがこんなに激しくスパークするものだとは思いませんでした。
 夜汽車を描く時にはぜひこの閃光も表現しなければ…。

カシオペア

 A個室カシオペアツイン。
 この列車ではスタンダードな客室です。
 室内にシャワーはありませんが、シャワー室からシャワーを取り除いたような小部屋(?)に折り畳み式のトイレと洗面台がついています。

カシオペア

 昼間、というか就寝前は向かい合わせのソファー。

カシオペア

 座面を引き出し背もたれを倒すとベッドに変身!
 2台のベッドのうち1つはレール方向、もう1つは枕木方向…L字型に枕を突き合わせて寝る格好になります。
 限られたスペースにベッド2台とトイレ&洗面室を組み込む為の苦肉のレイアウトですが、個人的には若干の違和感は拭えません。

 食堂車といい寝台車といい、まさに寸分の隙もない緻密な設計には只々感心するばかりですが、一方でその緻密さ故、例えばバッグの置き場所からジャケットの掛け方、靴の脱ぎ方まで厳格に定められてしまう(大袈裟でなく、靴の脱ぎ場所を間違えると洗面室のドアが開かなくなったりする)、そんなところに若干の窮屈さを感じてしまう方もおられるかも知れません。
 決してどちらが良い悪いではなく、このあたりの受け止め方が「北斗星」と「カシオペア」、人それぞれの好みの分かれ目なのかな?という気がします。

カシオペア

 「北斗星」が入らなくなって随分経ちますが、「カシオペア」は今でもこの駅に停車しています。
 深夜1時45分頃、青森駅到着。
 乗客の乗り降りはありませんが、ここで機関車交換、進行方向を変えて青函トンネルへと向かいます。

 新幹線工事の作業時間確保の為…との理由で昨年3月、「北斗星1号」は廃止、「カシオペア」は青森から先の時刻が繰り下げられ、旧「北斗星1号」に近いダイヤに変更となりました。
 つまりこの先、想い出の「北斗星1号」の旅の再現、ということになりそうですね。

カシオペア

 そうそう、函館ってまだまだ夜明け前だったんだよなぁ!…と、長年染み付いた「北斗星1号」の時間感覚が甦ってきました。
 5時1分、函館到着。
 こんな時間なのに降りられるお客さんも結構多いようです。

カシオペア

 五稜郭でを通過する時、ふと見ると「トワイライトエクスプレス」が停まっていました。
 あちらは函館には入らず、ここで機関車交換です。

カシオペア

 5時52分、森到着。
 始発列車になるのでしょうか?人気の無い駅構内で明かりを点したディーゼルカーが数台、エンジンを唸らせていました。
 これも「北斗星1号」の頃から変わらぬ懐かしい光景です。

カシオペア

 「北斗星より混みますから早めに来たほうが良いですよ!」と勧められ、営業開始の6時半より15分ほど早く行って並びました。
 案の定、オープン前には10人以上の列になり、私達が席につくと程なく満席になってしまったようです。
 朝食メニューはやはり「北斗星」と同じですが、「北斗星」と違ってドリンク単品の設定はないそうです。

カシオペア

 伊達紋別あたりでようやく陽が昇り始めました。

カシオペア

 まもなく東室蘭。
 海沿いの工業地帯、いつも貨物船の姿が見えるところです。

カシオペア

 激しくスパークを散らしていた電気機関車に代わって、道内では黒煙を噴き上げるディーゼル機関車が先頭です。
 上り列車ではこのラウンジカーが最後尾、機関車に遮られることなく存分に眺めが楽しめるはずですが、逆にこうして機関車の奮闘ぶりを間近に眺められるのもこの列車ならではの貴重な体験と言えそうです。

 ラウンジカー入口付近には販売コーナーがあって、テイクアウト用のコーヒーなどはここで買うことができます。
 また、乗客全員に配られる「モーニングドリンクチケット」を使って、1杯ずつ無料サービスを受けることもできます。
 食堂車はお食事専用、ドリンクはラウンジカーか各々個室で…と明確に区分けされているようです。

カシオペア

 何となく、朝がちょっと慌しいなと感じてしまうのは、札幌着11時15分の現行「北斗星」に慣れてしまったからでしょうか?
 9時32分、札幌到着…軽い眠気と清々しい朝の空気感はやっぱりあの頃の「北斗星1号」と一緒でした。

 本音を言えば10年前、「北斗星」の減便と引き換えにデビューした「カシオペア」にささやかな敵愾心を抱いた事も、「北斗星」とはあまりにも対照的な銀色の車体はどうも馴染めないなと思った事もありました。
 でも、「カシオペア」は「北斗星」ではないけれど、ある意味やっぱり「北斗星」の一部なんだなと、一度乗ってみて何となく、自分なりに納得できたのが今回の旅の大きな収穫だったかも知れません。
 いつもの駅、いつもの風景、いつもの乗務員さん達と…勝手の判らぬ初めての寝台車。
 終わってみれば「北斗星」のスピンオフを見ていたような、ちょっと不思議で愉快な旅でした。


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#323
2008.12.31
北斗星(下り)
上野→八雲
(B1)

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北斗星4年ぶりの越年乗車

 私自身、数日前までは全く予定外だった今回の旅。
 長くなるので詳細は省きますが、私事と仕事の諸々の事情と、何より満席で全く取れなかった今宵の切符が直前になって取れてしまった事が全ての始まりでした。
 ともかく瓢箪から駒の越年乗車は「北斗星」三昧だった今年一年の締めには格好のシチュエーション。
 乗車前からちょっとワクワクしています。



北斗星

 大晦日の下り便とあって車内は家族連れの帰省客や旅行者で大混雑!
 「北斗星」自体が目的のリピーターさんとおぼしき方々も大勢おられるようです。
 ケージに入れられたペットの犬が目立つのも帰省シーズンの特徴でしょうか?
 皆さん一様に「北斗星での年越しを楽しむぞ!」といった空気に満ち満ちていて、上野出発前から列車じゅうが何となくソワソワとした雰囲気です。

 年末年始の臨時列車か、それともダイヤの乱れでしょうか?
 赤羽あたりでふと車窓を覘くと、いつもは見ない珍しい電車が隣を並んで走っていました。

北斗星

 やっぱりこういう日にはちょっと贅沢を…という方も多いのでしょう。
 ディナータイムもいつも以上の大変な盛況ぶり。
 普段はテーブルの上にお弁当やグッズ類を並べて、販売コーナーとして空けてある厨房寄りの2人席にまで今日はお客さんが入っていました。
 案の定、ディナーが押して約30分ほど遅れたパブタイムもオープン前から長蛇の列!
 オープンと同時に2人席まで全て相席になるほどの混雑ぶりでした。
 (その日の状況にもよりますが、普段は余程混み合わない限り2人席の相席は極力避けているように見受けられます)

 今年最後のオーダーはイタリアンハンバーグセット。
 何となく、今日のポテトはとても美味しく感じられました。

北斗星

 23時を少し回って、今年の営業全て終了。
 客の私が見ていても目が回るような混雑の中、それでも細やかな気配りを絶やさずにサービスに努められていたアテンダントさんの姿がいつにも増して印象的でした。

北斗星

 せっかくなので今日の記念にグッズを一つ買っていくことにしました。
 北斗星ストラップ千円也♪
 同じものは今年の3/14、その日を最後に減便・廃止となる「北斗星1号」最終運行&私の北斗星乗車300回目の記念に買っているのですが…。
 値段も手頃なので節目節目に一つずつ買い足して、いずれは名札代わりに持ち物全てにつけてやろうと密かに目論んでいます(笑)。

北斗星

 一年の計はナントヤラ。
 大晦日の夕方、フッと浮かんだイメージをラフスケッチにまとめながら新しい年を迎えました。
 20年間見続けてきた「北斗星」の姿、今年はもっともっと沢山描いていきたいと思っています。

北斗星

 盛岡あたりで部屋に戻って、あかりを消してふと見上げると素晴らしい星空!
 やっぱり夜汽車っていいなぁ…と、ぼんやり眺めているうちにウトウトして、ふと気がつくと青森県内、車窓は激しい雪のようでした。
 明日は早起き、少しでも眠っておくことにします。

北斗星

 「皆様、新年おめでとうございます」と朝一番の車内放送。
 函館手前、朝6時20分、外はまだ真っ暗です。
 モーニングタイムも混みそうなのでオープンと同時に食堂車へ。
 初日の出を期待して海側に席を取ったものの、残念ながら雲に阻まれて難しそうな気配です。
 それでも、次第に明るくなっていく青白い雪原や、山裾がかすかに見える駒ケ岳、森から先の穏やかな朝の海、飛び交うカモメ達を眺めながら頂く温かなスープとお料理は、どんなおせち料理にも勝る贅沢な想い出になりました。

北斗星

 八雲の手前、落部駅で後続の特急列車の通過待ち。
 いつもなら上り貨物列車もここですれ違うはずですが、正月休みでしょうか?今日はその姿はありませんでした。

北斗星

 4年ぶり、4度目となった「北斗星」越年乗車。
 中でも今回は色々な意味で、特に印象深いものになりました。
 うまく言えませんが…この一夜の車中で見た事、感じた事は、絵描きとして後々きっと物凄い財産になるんじゃないかな?と、漠然とですがそんな気がしています。

 本当はもっと乗っていきたいところですが、残念ながら八雲で下車。
 ツルツルと滑るホームに降りて、ゆっくりと遠ざかっていく列車を見送りながら、あぁ、無理してでも今日この列車に乗って本当に良かったなぁ!と、えもいわれぬ充実感と共に大きく溜息をつきました。

 さて、次の目的地に向けて、これから八戸までトンボ帰りです…。


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#322
2008.12.11
北斗星(下り)
上野→札幌
(B下)

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北斗星札幌移住5周年の節目に

 積年の北海道移住の夢がようやく叶えられたのは5年前の今日の事。
 最後に東京を離れるのは絶対に「北斗星」でなければ!とずっと心に決めていました。
 学生時代から11年間住み続けたマンションを引き払ったその日の晩、上野駅から、これが最後になるであろう札幌行き「北斗星1号」のB個室に落ち着いた時の何ともいえない気持ちは今でも忘れられません。
 夢が叶った嬉しさよりも、新天地への期待や希望よりも、本当に生きていけるのかという切実な不安のほうが遥かに大きかった気がします。
 あれから5年の節目の今夜、もう一度、あの日と同じ道程を辿ってみる事にしました。



北斗星

 5年前と同じ「北斗星」…とは言っても、「北斗星1号」は3月のダイヤ改正で減便・廃止に。
 食堂車をはじめ客車も随分組み替えられてしまいましたが、でもやっぱり「北斗星」は「北斗星」。
 今もこうして走り続けてくれている事に感謝すべきでしょうね。

 アルコールは本当に全くダメなんですが、今日ばかりはグラスワインを1杯だけ…。
 「少なめで…」と念を押して頼んではみたものの、これでもかなり酔いが回ってしまいました。

北斗星

 今回もちょっとした変化を発見!
 今年の春以降は機関車の前後に1枚ずつ、客車と繋がっている側にも取り付けられるようになっていた本州内の機関車のヘッドマーク。
 ふと見ると客車側の1枚が無くなって、列車先頭の1枚のみになっていました。
 円盤状のプレートを機関車のフックに掛けてボルトで固定するだけなので、青森で折り返す時に付け替えれば事足りるわけですし、客車側は連結すれば隠れてしまうので何等問題はないのですが…でも今まであったものが見えなくなると何だか不思議な気がします。

北斗星

 青函トンネルを抜けた後、行き違いの貨物列車の遅れの影響で茂辺地、上磯で臨時停車。
 函館到着は9分ほどの遅れとなりました。
 「世界最長の青函トンネルを抜けて、定刻通り北の大地を駆け抜けております…」などと、しばしば旅情溢れる車内放送で楽しませて下さる函館の車掌さんですが、さすがに列車が遅れた時は「只今9分ほどの遅れで…」と、シンプルで実務的な案内に徹されるようです。
 少しでも遅れを回復すべく、函館ではいつもより急いで機関車交換を済ませて慌しく発車です。

北斗星

 下り列車のお楽しみ、大沼国定公園から眺める駒ケ岳は残念ながら垂れ込めた雲の中でしたが、森に近付くにつれ徐々に雲も薄くなり、やがて森を過ぎて車窓後方を振り返れば噴火湾の向こうに雪を抱いた雄姿がくっきりと浮かんでいました。
 あっ、駒ケ岳ってこんな風に見えるんだ!と新たなポイントもいくつか発見。
 今後の創作にも大いに参考になりそうです。

北斗星

 長万部を過ぎるとすっかり陽も差すようになりました。
 洞爺あたりで少し遅めの朝食へ。
 食堂車の大きな窓の向こうでは、穏やかな海も、積もったばかりの新雪もキラキラと輝いていました。
 こんな目がくらむような風景に出会ったのも随分久々のような気がします。
 あぁ北海道っていいなぁ!北海道に住んで本当に良かったなぁ!!と、しみじみ感じ入ってしまうような光景でした。

北斗星

 移住5周年の節目、何か記念になるものが欲しいなぁ…と思いながらもなかなか見付からずにいたのですが、案外身近なところに格好のモノがありました。
 車内限定・牛革製キーホルダー3千円也♪
 もう10年以上も前からちょっと気にはなっていたものの、何となく手を出す機会が無かった一品です。
 なまじリピーター故の、こういうグッズ類はいつでも買えるという妙な安心感に加えて、贅沢というほどではないものの、まぁ、また今度でもいいかな?と思ってしまう微妙な金額。
 でも逆にこういう日の記念にするには正に打ってつけと言えそうです。
 (今日を逃すとまた数年は買う機会は無いでしょうし…)

 手のひらに収まる程良い大きさとしっくりとくる重み。
 何だか使ってしまうのが勿体ないような気もしますが、でもこれはコレクションとして仕舞っておくべきものではないでしょう。
 本物の「北斗星」の客車たちのように、ボロボロになるまで大事に使い続けてあげたいと思います。

北斗星

 5年前のあの日、粉雪舞う札幌駅のホームに降り立つ自分自身の姿を夢想しつつやってきたものの、暖冬でまるで雪が無く拍子抜けしたのを覚えています。
 つまらぬ拘りと笑われそうですが、雪の無い街から移り住んできた私にとって、新天地への第一歩はやっぱり雪の中に踏み出したいなというのが本音でした。
 今日の札幌はイメージ通りの粉雪模様。
 5年越しの夢が叶ったようでちょっと嬉しくなりました。

北斗星

 本当に生きていけるのか?と不安を抱きながら始まった私の北海道生活も、沢山の御縁に支えられてようやく軌道に乗せることができました。
 もう乗る事も無いだろうと思った「北斗星」にも、こうして今も乗り続けているのはご承知の通りです。
 結局、出発地が東京から札幌に変わっただけで、「北斗星」との御縁はまるで変わらなかったみたいですね(笑)。

 でも、振り返ってみると既に人生の半分以上を「北斗星」の傍で過ごしてきて、そして私の人生に関わるような御縁の多くが必ずどこかで「北斗星」とも繋がってきたという事実。
 決して冗談でも誇張でもなく、私の人生、もし「北斗星」と出会っていなかったら全く違うものになっていたのは間違いありません。

 本当に色々な事が起こった今年の「北斗星」、どうやらこれが年内最後の乗車になりそうです。
 また来年も、沢山の素晴らしい出会いに恵まれますように…。
 ありがとうございました!!


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#321
2008.12.8
北斗星(上り)
札幌→上野
(B下)

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北斗星日も短くなって

 上り「北斗星」…昔で言うところの「北斗星2号」とくれば夕陽を浴びて旅立っていく印象が強かったのですが、さすがに冬至間近のこの時期ともなると札幌(17:12発)の時点で既に真っ暗。
 むしろ昔の「北斗星4号」(19:27発)あたりの印象に近いかも知れません。
 殊更そんな風に感じてしまうのも、夜のホームで一際目を惹く食堂車が元々「4号」の車両だからでしょうか?
 1往復体制になって早9ヶ月、その間に上り列車だけでも10回は乗せて頂いたというのに、長年刷り込まれた感覚というのはなかなか消えないものですね。




北斗星

 南千歳を過ぎると車窓右手に新千歳空港。
 汽車旅派の私の目にも、やっぱり夜の空港は魅力的に映ります。

北斗星

 東室蘭を過ぎてまもなく、車窓左手に大きく現れる白鳥大橋の姿。
 勿論、昼の眺めも素晴らしいのですが、こういう大きな吊橋はやっぱり夜景が似合うようです。
 そういえば、京都から今はなき長崎行き寝台特急「あかつき」に乗った時も、夜も結構遅かったにも関わらず、「只今左手に明石海峡大橋が…」と車内放送が流れていたのが印象的でした。

北斗星

 ささやかな発見!B寝台車のテーブルにこんなものが残っていました。
 瓶ビール・ジュース用の「栓抜き」です。
 思い起こせば子供の頃、列車のテーブルには必ず付いていたものですが、実際にこれで栓を抜いたという記憶は残念ながら全く持ち合わせてはおりません。
 ちょうど私の幼少期が、駅売店や車内販売から瓶飲料が消えていく過渡期だったのでしょうか?

 あ、そういえば食堂車の瓶ビールがもしかしたらまだ王冠つきだったかな?
 でもテイクアウトは缶ビールだけ??
 下戸の私がビールを買うことはまずないのですが、でも一回位はこの栓抜き、試しに使ってみたい気もします。

北斗星

 函館はまだ雪ではなく雨模様。
 青い車体がしっとりと濡れていました。

北斗星

 いつの頃から始まったのか、毎年この時期になると決まって食堂車にも「ボジョレー・ヌーヴォー」が積まれます。
 確か5年前、2003年の解禁前夜(11月19日)に乗り合わせた時は、わざわざ深夜0時を待って食堂車で特別販売を始められたのを見て驚いたのですが、あれはあの年限りのイベントだったのでしょうか?
 いずれにせよ、下戸の私には縁のないお話なんですが…。

北斗星

 ライスの盛り付けはコックさんか、アテンダントさんか分かりませんが、レーズンとアーモンドスライス?の乗せ方にもささやかな個性が現れるようです。
 パラパラとまんべんなく散らすのが一般的なようですが、見ると今日はレーズン5粒を星型に、しかも全て長手方向を外側に向けてきちんと並べて、その中心にアーモンドをひと盛り…と、随分丁寧な乗せ方をされているのに気付きました。
 きっと几帳面な性格の方が盛り付けて下さったんでしょうね。

 食堂車パブタイムのビーフカレー。
 春頃から続いていた「昔懐かしの食堂車の~」云々の宣伝文句が消えていたので、もしやメニューが変わったのかな?とも思ったのですが、頂いてみると味は変わっていないように感じられました。
 最初は「初夏のスペシャル」と銘打っての特製メニューだったものの、どうやら定番商品としてすっかり定着したようです。

北斗星

 仙台、福島はまだ夜の闇。
 郡山も近くなって、ようやく空が染まり始めました。
 遥か上空の雲の具合でしょうか?絵の具を落としたような不思議な空の色が印象的でした。

北斗星

 6時半のオープンから少し遅れてモーニングタイムの食堂車へ。
 車窓からはようやく太陽が昇り始めました。

 最近では珍しく…と言うべきでしょうか?
 昨晩も今朝も食堂車は比較的空いていましたし、B寝台車も上段を中心に若干の空席が見受けられました。
 それでも個室は結構埋まっていたようですし、決して閑散とした雰囲気は感じられませんでしたから、オフシーズンの平日としては程々の賑わいと言っても良さそうです。

 先のダイヤ改正・減便から9ヶ月。
 減った1往復分の乗客が残り1往復に集中するのか、それとも飛行機に流れるのかも含めて、需給のバランスがどう変わっていくのか若干の不安と共に見続けてきたのですが、ここにきて何となく、ようやく程よいところに落ち着きつつあるような気がしています。
 

北斗星

 つい先日、JR東日本が「北斗星」に新型の電気機関車の導入を決めたとの報道が流れました。
 何でも「EF81」という在来機の老朽化が相当深刻で、このままでは首都圏の安定輸送にも深刻な影響を及ぼしかねない状況なんだとか。
 私も「北斗星」では何度も機関車故障に遭ってきましたから、そういう事情も何となく納得です。
 ともあれ、減便やらミャンマー譲渡やら淋しい話題が続いた中、「北斗星」にとっては久々の明るいニュースと言えそうです。

 そういえば今回、「研修生」の名札をつけた新人のアテンダントさんが車販ワゴンを押して頑張っておられました。
 何となく、明日に繋がる新しい胎動が始まりつつあるような、ちょっとした嬉しさが感じられた今回の旅でした。


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